四国の歌枕

     宮野惠基著『歌人が巡る 四国の歌枕』
 名所歌枕を一般に「歌枕」と呼ぶようになる。先人の名歌に触れ、まだ見ぬ地への憬れを掻きたてられる。本書は中央から離れた四国の歌枕を53ヵ所あえて選び、解説を施したもので、四国の文学に関心のある者には貴重な資料である。
阿波編…粟嶋、鳴門、阿波山、木津上浦、桜間ノ池、里海士 ほか。
讃岐編…白峰、松山、網浦、綾川、沙弥島、善通寺、筆の山、塩飽、中水門 ほか。
伊予編…伊予高嶺、、風早、宇和郡、矢野神山、飽田津、伊予湯、熟田津 ほか。   土佐編…室戸、夢野、土佐山、土佐海、御座浦、鏡河、名越山、打山、大崎 ほか。    ・松山…松山の波に流れて来し舟の
             やがて空しくなりにけるかな(西行法師)
  ・沙弥島…妻もあらば摘みて食げまし沙弥の山
             野の上のうはぎ過ぎにけらずや (柿本人麿)
  ・熟田津…熟田津に船乗りせむと月待てば
             潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな(額田王)