ああ、満洲

悦子さまへ

あなたのお父さんは満鉄に働いていたのですから、エリート。私の父のように開拓団で苦労したのとは、大違い。知らない父のことを調べて書いたら、満鉄帰りの知人から馬鹿にされたことを思い出す。我が家は小作農民。満洲に行けば広大な土地が得られると騙されて大陸に行った。侵略とも知らずに、意気揚々と行った。戦後は一塊の土地も得られず、死んで還った。北満の克山近辺だった。悦子さん、あなたは、克山の看護婦で働いていたと書かれていますね。ほぼ父と同じ所に住んでいたのではあるまいか。それはともかく、あなたは戦後岩波ホールの総支配人。花々しく活躍されましたね。私などしがない田舎教師。小作人の生涯でした。本日やっと地主への年貢を払わなくてもよくなったけれど、代々搾取された地主への恨みは、

決して忘れない。