徒然草の作者

 
    大野芳著『吉田兼好とは誰だったのか』 幻冬舎新書

 日本三大随筆の一つ『徒然草』は鎌倉後期、吉田兼好によって書かれた作品。爾来、兼好の実体は薮の中にある。本名は分かっているが、生没年不祥。原本は消失。最古の写本も兼好の死後数十年のもの。原本は存在せず、兼好が反古を壁や襖の張り紙としていたものを死後、弟子が剥がし集めたとも言われる。誕生から660年、ベストセラーであり続けた随筆文学名作を残した兼好の人物像を描く。
 伝説の吉田兼好…智の巨人小林秀雄は、『徒然草』の誕生を空前絶後の「事件」とした。「文学界」(昭和17年8月号)誌上であったが、今もその著者は相変わらず伝説の中にある。本名卜部兼好。出生・没年ともに不詳。推定では、弘安6年~観応元年4月8日。伝説と謎に包まれる。先人の諸説をとりまぜながら兼好の人物像をノンフィクション作家があぶりだした一書。