高瀬万葉講座は楽し。


  万葉集には葛の歌が21首に詠まれている。
     葛(くず)
  葛はマメ科クズ属のつる性の多年草。茎が非常に丈夫で、他の植物に絡み付いて数メートルにまで成長する。夏から秋にかけて花が咲く。根は薬用として葛粉として使われる。
     葛(くず)を詠んだ万葉歌
 秋の七草の歌を含めて、万葉集には21首に登場する。その多くは、旺盛な繁殖力やつるがどこまでも伸びていく様を詠んでいる。
0423  つのさはふ磐余の道を朝さらず行きけむ人の....(長歌)
0649  夏葛の絶えぬ使のよどめれば事しもあるごと思ひつるかも
0948  ま葛延ふ春日の山はうち靡く春さりゆくと山の上に....(長歌)
1272  大刀の後鞘に入野に葛引く我妹真袖もち着せてむとかも夏草刈るも
1346  をみなへし佐紀沢の辺の真葛原いつかも繰りて我が衣に着む
1538  萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花
1901  藤波の咲く春の野に延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ
1942  霍公鳥鳴く声聞くや卯の花の咲き散る岡に葛引く娘女
1985  ま葛延ふ夏野の繁くかく恋ひばまこと我が命常ならめやも
2096  真葛原靡く秋風吹くごとに阿太の大野の萩の花散る
2208   雁がねの寒く鳴きしゆ水茎の岡の葛葉は色づきにけり
2295    我が宿の葛葉日に異に色づきぬ来まさぬ君は何心ぞも
2835    ま葛延ふ小野の浅茅を心ゆも人引かめやも我がなけなくに
3068    水茎の岡の葛葉を吹きかへし面知る子らが見えぬころかも
3069    赤駒のい行きはばかる真葛原何の伝て言直にしよけむ
3072    大崎の荒礒の渡り延ふ葛のゆくへもなくや恋ひわたりなむ
3412    上つ毛野久路保の嶺ろの葛葉がた愛しけ子らにいや離り来も
3834    梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く
4508    圓の野辺延ふ葛の末つひに千代に忘れむ我が大君かも
4509    延ふ葛の絶えず偲はむ大君の見しし野辺には標結ふべしも
 
受講生T「この蔓草は困りものです。草刈り機にまくいついて往生します」
講師K「それは知りませんでした。そんなにお困りでしたか。秋の七草の一つで優         雅な花と思っていましたのに」
受講生T「秋の七草かどうか知りませんが、我ら農民の敵みたいなものです」
講師K「お見それしました。そんなに恨みに思っていましたか」
受講生S「それでも、花はきれいではありませんか」
講師K「そうでしょう。葛の弁護を他の方もしてやってください」
受講生M「葛餅、葛湯のような飲食に供していたじゃありませんか」
講師K「そうでしょう。葛根湯などは漢方薬で初期風邪薬ですし、漢方薬として古来欠かせなかったと思いますよ」
受講生T「いやいや、自分に沁みついているのは、蔓草として何メートルも蔓延(はびこ)る葛の肩を持つ気はしません」
講師K「おもしろい。今日の万葉講座はクズ論争になりましたね。ところで、秋の七草の中で目くじら立てて槍玉にあげられる葛(クズ)…屑(クズ)とは関係ないでしょうね」
講師Kのモノローグ「つる性の植物、このの根から取れる澱粉は食品として、また薬として重用されてい古代人は我々とは違い収穫したものを腐らせることなどはしなかった。 その根茎を掘りとって使うなど、庶民の生活の中にとけ込んでいた。奈良県吉野地方の吉野葛粉とも言うが、クズの根から作ったクズデンプンで、和菓子の材料や葛湯にもなる。西行吉野桜を見に行った文学の旅で思いがけずこの葛湯を賞味してたのも遠い思い出のひとつ」