「剣持万葉講座受講生」への推薦書

 
①『万葉語誌』 多田一臣編 筑摩選書
「語誌」とは、社会史的、文化史的に記述したもの。一つの語にもその背景がある。
いのち・いも・うつせみ・さやけし・たわやめ・むすぶ・やさし・ゆゆし・わたつみ・をし等 『万葉集』に用いられている重要語、一五〇語を掲げ、語義を丁寧に解説している。各語に内在する古代的論理や世界観を掘り起こし、肉付けしている。万葉語の世界を体得するための万葉辞典というより「万葉事典」と言った方がよい奥行きがある。
 
②『万葉挽歌のこころ 夢と死の古代学』 上野誠 角川選書
  愛しき人が死ねば、その面影を思慕し、その悲しみを歌いたくなる。その挽歌は愛を詠んだ相聞とともに『万葉集』の大切な部立にある。本書は筆者独自の挽歌論展開されている。その一首一首を丁寧な語彙解説と現代語訳で読み解いている。「夢」で亡き人と出会う万葉独特の世界観、「船」で死者を送る葬送、神と人、悼む挽歌の数々を幅広く読み説き、日本人の死生観に迫る万葉論。
 
③『美の万葉集』 高岡市万葉歴史館編 笠間書院
 万葉びとは何を「美」と捉え、歌にしたのか。十人が分担執筆している論文集。
歌われた自然・人・ことばを手がかりに、歌集としての構成や配列の美しさなども視野に入れ、万葉集が内包する古代人の考え抜いた美を探る。全11編の論考。万葉集の「美」について、「天離る夷 」考、ことばの「美」-序詞ー、さびしからずや道を説く君、女歌の美ー大伴坂上の郎女の言葉、藤波の美の誕生、風土の美をうたう、天象の美、赤人・ことばの美的整斉、大伴家持の美、万葉集古写本の美を掲載す。