剣持歌集
道端に揚羽見つけて永遠に姿伝えるを我が使命とす 澄人 許せ揚羽我が永遠の標本に犠牲となりし今日の運命を 澄人
木々多き我が庭に鳴くクマゼミの大合唱に辟易とする
母と子と渚で遊ぶ幸せよ 父の姿のなきを気して 澄人
海の果てに消えてゆかむか 鳥となり青空の果てに消えてゆかむか 雅舟
夏渚子らと遊びし日のごとく今日目の辺りその景を見し
群れなして来ては去り行く鵯の人に近づく性身に着けず 澄人
雀とは違う鳥なの? ニュウナイスズメ?
常日頃自堕落に棲む海猫を飛び立たたせみてカメラに収める 澄人
家出せし愚息が帰り来たごとく海猫浜に群れなし返る 夜の九時急に花火の音がして外に出で立てば闇に花咲く 不遜人近所に住んでる不幸せ別の僥倖信じて明日へ
身の回り生き物たちがそれぞれの命を生きている不思議さよ 人知れず野原のどこにも生き物が生きてる不思議なにか嬉しい
伊吹島西に夕日は消えてゆく 西方浄土であるかもしれず できうれば仏に頼らず逝きたいと強がり言ってる我が命かな 雅人
図らずも今日出会ひたる花々よこんな女の人がほしくて
仁尾町父母(ちちぶ)の浜辺に母と子と犬も一緒に遊び戯る
紋白と比べ落ち着きなき黄蝶 今日七夕にしかとカメラに 半夏生に止まる黄蝶をしかと撮る 雅舟
昔日は田の草取りをよくせしも今どき田の草取る人は稀 澄人 稲作の敵は雑草稗などを取り除くなど手が回らざる
別の家の木槿を撮ってデートさせる七夕祭前夜の営み 澄人 紫と白の木槿をコラボして七夕前夜の花星祭り 澄人
おもてなしモットーとせし人逝きて庭に咲きたる痛々し白 行きずりの塀の上なる凌霄花 小鳥見えずも声のみ絶えず 家遠きお花畑に此花あり 聞くすべもなく立ち尽くし居て 伸びるだけ伸ばしてやれる大家さん大洋の青オーシャンブルー
鳥脅しの鳥悠々と縦横に軽快に飛ぶ紐付きなのに 萩原にて
木の葉食う虫取らんとして虫に刺され あっという間に指腫れあがる オキクムシ 方言か?
祝歌 都議会の当選したる人の顔 朝顔 合歓花 パンパスの花 澄人
里芋の葉に置く雨滴 見逃すはずのない珠玉なり 芋の露連山影を正しうす 蛇笏の名句 露の世は露の世ながらさりながら 一茶の名句 一茶は三歳で実母に死なれ、継母と異母弟を嫌い 十五歳で江戸へ奉公へ出される。自身の生い 立ちの不幸も知られているが、結婚…
白無垢の木槿咲きゐてあはれなり 夫婦離散の跡地に来れば かつてここに女流歌人が住んでいた オーシャンブルがすべてを語る
川水を堰き止め水田に取水せし昔と違い 今はパイプラインで 水番は鳥に任せて百姓は我田に来るも稀まれにして
鬱々と梅雨曇りの今夕は妬みの蝶を詠まむとするなり でき得ればフナ虫なんかに生まれ来ず香しき花の蜜を吸いたい
恐怖とも威嚇とも見る蟹の目の深き光にたじたじとなる 雅舟 図らずも出会ひし生き物 鳥獣も人も全てが懐かしかりき 雅舟
今耳に入る鳥たち声のみでただ花たちに及ばぬ定め
今朝の朝 梅雨の雨降らず 狭庭辺に 見るものすべて 命の輝き 食べ物は胡瓜唐黍Banana蝸牛まで
現実の全てを忘れ美の極致簪の美に浸りし時あり 家持二世剣持雅澄
あまねく知られる花菖蒲 名の知れぬ野の花 いずれも初夏の花 育てる花 育つ花あり どれも花 庭に育てて 野に育つもよし
誰も知らぬわがふる里の夕景は心の奥にたたみて仕舞う ふるさとの河口に独り来たりけり誰にも渡さぬわが宝景