松島湾の風景
そもそもことふりにたれど、松島(まつしま)は扶桑(ふそう)第一(だいいち)の好風(こうふう)にして、およそ洞庭(どうてい)・西湖(せいこ)を恥(はじ)ず。
東南(とうなん)より海を入(い)れて、江(え)の中(うち)三里(さんり)、浙江(せっこう)の潮(うしお)をたたふ。
島々(しまじま)の数(かず)を尽(つく)して、欹(そばだつ)ものは天を指(ゆびさし)、ふすものは波(なみ)に匍匐(はらばう)。
あるは二重(ふたえ)にかさなり、三重(みえ)に畳(たた)みて、左にわかれ右につらなる。
負(おえ)るあり抱(いだけ)るあり、児孫(じそん)愛(あい)すがごとし。
負(おえ)るあり抱(いだけ)るあり、児孫(じそん)愛(あい)すがごとし。
松(まつ)の緑(みどり)こまやかに、枝葉(しよう)汐風(しおかぜ)に吹(ふ)きたはめて、屈曲(くっきょく)をのづからためたるがごとし。
そのけしき、よう然(ぜん)として美人(びじん)の顔(かんばせ)を粧(よそお)ふ。
ちはや振(ぶる)神(かみ)のむかし、大山(おおやま)ずみのなせるわざにや。
造化(ぞうか)の天工(てんこう)、いづれの人か筆(ふで)をふるひ、詞(ことば)を尽(つく)さむ。