加藤郁乎『日本は俳句の国か』

、  加藤郁乎が『日本は俳句の国か』(平成8年、角川書店刊)で紹介している俳句(古今混在)から
 
  西行も未だ見ぬ花の郭かな         山東京伝
  何の木の花とはしらずにほひかな      松尾芭蕉
  散花に南無阿弥陀仏とゆふべ哉      荒木田守武
  しらぬまにつもりし雪のふかさかな     久保田万太郎
  竹の葉のさしちがひ居る涅槃かな      永田耕衣
  むめのはなきそのゆめみしゑひもせず   角川春樹
  秋天に表裏山河の文字かなし        加藤楸邨
  白扇のゆゑの翳りをひろげたり        上田五千石
  いろはにほへの字形なる薄哉         西山宗因
  尾を上げて尾のした暗し春雀        永田耕衣
  むさし野のさこそあるらめ馬場の月     大田南畝
  五月雨やただ名はかりの菖蒲河岸     永井荷風
   
    ◎こんないい句(斬新な句)があったのかと、その眼識力に感心する。