「現代俳句」女流俳人句集12冊

       「現代俳句」女流俳人句集12冊            巻頭句と巻末句

  鈴木ゆき句集 『青蔦』  水明発行社        塀攻める如く青蔦のぼりゆく
                                  句碑永久に名水の里花吹雪

  永瀬千枝子句集 『貝覆ひ』  東京四季出版   海女が干す魚のきらめき春の磯
                                  散る桜山ざわざわと鱗立つ  
  
    摂津よしこ句集 『珈琲館』  ふらんす堂     滝口に大注連わたす深空かな
                                 夢の世や珈琲館は今も雪
    
  谷野家代子句集 『花水木』  文学の森      薺粥冷えたる苦さ昭和果つ
                                 ダリの目が矢鱈一杯師走風

  下山光子句集 『茜』     文学の森         味噌汁や白雲白鳥あふれる頃
                                  花冷えの世やどの仮面にて遊ぶ

   原田栖子句集 『紙風船』   牧羊社         緋桃咲く一段高き指定席
                                  風花の線路をよぎる黒い犬
 
  堀慶子句集  『涅槃』    牧羊社          貝合つて一つが音を生む春意
                                  春の霜橋によろけし轍跡 

  萩原みさ子句集 『心太』    田中工房      心太つるりと無欲になってゆく
                                  咳払い一つと大根置いてゆく

  森千代子句集 『薯の花』    風神社       いつも未完の農業企画初暦
                                 みちくさも処世術なり日脚伸ぶ

  日吉登美女句集 『花俵』     夘辰山文庫   冬日ぽつかり不漁の岸に舟乾く
                                  大枯野閉ざす木柵のもたれ合ふ

  四方万里子句集 『環』     四季書房       葱坊主マーチの楽に風おこる
                                  蟋蟀やいつもの眺め揺れのこり

  対馬康子句集 『純情』   本阿弥書店       号泣の眼の端をゆくかたつむり
   〈髪洗うたび流されていく純情〉           咳やまぬここより暗夜行路の地