其子等に捕へられむ螢と成りて


        其子等に捕へられむと母が魂(たま)螢と成りて夜を来たるらし     窪田空穂

   幼い子どもたちを遺して若くして死んでいった妻は、どんなに心残りであったことだろう。あれから何年経ったのか。ふと見ると蛍が飛んできている。子どもたちが取ろうとしているのであってもいい、そうでなくったっていい。ただ子らにとってほしいと願い、魂となって飛んできているのにちがいないとひそかに空穂は思う。後ろ髪を引かれる思いで逝った無念の母親の気持ちが分かる《心の歌人》空穂。こんな名歌がこの世にあったことを嬉しく思う〔空穂崇拝者〕

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