夕暮れの水田・麦畑
夕暮れの時はよい時、限りなく優しいひと時
半世紀前の小豆島時代、青年教師であった日
現代国語で教えて、生徒に感銘を与えた詩
夕ぐれの時はよい時 堀口大學
夕ぐれの時はよい時、
かぎりなくやさしいひと時。
それは季節にかかはらぬ、
冬なれば煖炉のかたはら、
夏なれば大樹の木かげ、
それはいつも神秘に満ち、
それはいつも人の心を誘ふ、
かぎりなくやさしいひと時。
それは季節にかかはらぬ、
冬なれば煖炉のかたはら、
夏なれば大樹の木かげ、
それはいつも神秘に満ち、
それはいつも人の心を誘ふ、
それは人の心が、
ときに、しばしば、
静寂を愛することを
知つてゐるもののやうに、
小声にささやき、小声にかたる…
夕ぐれの時はよい時、
かぎりなくやさしいひと時。
若さににほふ人々の為めには、
それは愛撫に満ちたひと時、
それはやさしさに溢れたひと時、
それは希望でいつぱいなひと時、
ときに、しばしば、
静寂を愛することを
知つてゐるもののやうに、
小声にささやき、小声にかたる…
夕ぐれの時はよい時、
かぎりなくやさしいひと時。
若さににほふ人々の為めには、
それは愛撫に満ちたひと時、
それはやさしさに溢れたひと時、
それは希望でいつぱいなひと時、
また青春の夢とほく
失ひはてた人々の為めには、
それはやさしい思ひ出のひと時
失ひはてた人々の為めには、
それはやさしい思ひ出のひと時