「のつご」縁起
ノツゴ(野都合)はん
西讃(香川県西部)には「のつご」と称する地名が二十数ヵ所ある。農村地帯の境目にあり、土俗信仰の対象にされている所である。その一つが油井の野都合で樹齢八百年以上と推定される大楠が自然木として残されている。柞田郷の中心にある山王日枝神社と大楠と離れ、柞田庄の西南・坤隅でこれと対峙していると言える。
古くは山田の浜の海岸線がこの近くまで迫っていた。伝説として、平家の落人重貞一族郎党が落人として流れ着き、ここで落命したという哀話がある。かつては賢霊塚と呼ばれ、これまでの牛馬守り神と合わせて祀ったとも伝えられている。
「のつご」の語源は「ノツカサ(野司る)→ノツゴ」と転じたとも言われる。各地で野都合・野津古・野津後といろいろ書くが、漢字を宛てただけである。ただ「野」が上につくのは、農村の野原の守り神を意味している。 柞田では「油井のノツゴ(野都合)はん」として知られている。
なお、すぐ南には埴穴(はにあな)古墳があって「花稲」の語源であるという説もある。