楼蘭

       『楼蘭』  井上靖
 大国の漢と匈奴とにはさまれた弱小国楼蘭は、匈奴の劫掠から逃れるために住み慣れたロブ湖畔の城邑から新しい都城に移り、漢の庇護下に入った。新しい国家は善と呼ばれたが、人々は自分たちの故地を忘れたことはなかった。それから数百年を経て、若い武将が祖先の地を奪回しようと計ったが…(楼蘭発掘美女ミイラ)↓
イメージ 1
イメージ 2
 
 タクラマカン砂漠… 西域に楼蘭と呼ぶ小さい国があった。楼蘭東洋史上にその名を現して来るのは紀元前120年頃でその名を史上から消してしまうのは同じく紀元前77年であるから,前後僅か50年ほどの短い期間、この楼蘭国は東洋の歴史の上に存在していたことになる。現在西域地方は大部分中国の新彊省に包含されているが、いわゆる胡族の住む胡地であり,異民族のすむ異境であった。ここが東西文化交流の回廊となり,いわゆるシルクロードなる隊商路となったのは後世のことである。紀元前わずか50年間だけ歴史上に姿を現した楼蘭国を復元させるために、克明に資料を分析し逞しく想像力を働かせた作品。亀井勝一郎は、「この作品には人間と人間との複雑な心理的関係など一つもない。自然の暴威と、民族間の闘争の、容赦のない結末、興亡の激しさか砂塵とともにあらわれ、消えてゆくだけである。しかも、文章の間から立ち上る幻想は、読者に強く迫るにちがいない」と書いている。