梅が香やしらゝおちくぼ京太郎


   梅が香やしらゝ落窪京太郎    芭蕉

 元禄4年春の作。 『韻塞』『泊舩集』所収
 梅の香が匂う頃ともなると、(あるいは、新春の読初めとして)
①古典の登場人物が懐かしく偲ばれてくる。
②古典を読み耽る娘(乙女)の姿が思い出されてくる。
 どちらの解釈もありうる。 雅趣に富み、快調なリズム感のある句として一般に評価が高い。「しらら」も「落窪」も「京太郎」もこの時代にはよく知られた古典文学物語であった。浄瑠璃『十二段草子』「姿見」の文句取り。「しらら」は散逸。「落窪」は『落窪物語』ではなく、お伽草子の「小落窪」 「京太郎」は現存の中世小説。

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