永田耕衣著『名句入門』

    古今の名句に解説、独自の批評をしたもの
 冒頭の一句は、芭蕉の「荒海や佐渡に横たふ天の川」
  朝顔の紺のかなたの月日かな     石田波郷
 月明の宙に出で行き遊びけり      山口誓子
 冬蜂の死にどころなく歩きけり      村上鬼城
 冬菊のまとふはおのがひかりのみ   水原秋桜子 
 死ねば野分生きてゐしかば争へり   加藤楸邨
 くろがねの秋の風鈴鳴りにけり      飯田蛇笏
 桐一葉妃当りながら落ちにけり     高浜虚子
 入れものがない両手で受ける      尾崎放哉
 鉄鉢の中へも霰               種田山頭火
  しんしんと肺碧きまで海の旅       篠原鳳作
 あなたなる夜雨の葛のあなたかな   芝不器男
   「あとがき」より
 出会うなり、吽吽とうならせられ切りの一句、そんなのが本当の名句というものかもしれない」「その一句が、出会うなり生きていてよかったという生の歓びを多少とも与えてくれる」ものだという。