曼珠沙華の歌句
~あなたは今日曼珠沙華を持ってゆかれましたね~
どんな画賛だったのですか?
(単一表現が光っている名句。誓子が療養生活を送っていた昭和十六年の作)
虚子が「 ホトトギス」を通じて起こした女流俳句興隆気運の中から踊り出た一人で、平明な言葉の中に豊かな感性が生きて躍動している句が多い。作者は一人娘で母親の愛を一身に受けて育ち、母亡きあともこよなく母を恋い慕った女流俳人。
③曼珠沙華一群燃えて秋陽強しそこ過ぎてゐる静かなる道 木下利玄
大正14年(1925)歌誌『日光』に発表された「曼珠沙華」連作十首の中の一首。「炎威を残している秋の陽に照り映えて、毒々しいまでに燃えている。小高い丘の墓場に固まって咲いているのを見ると、不思議な寂しさを人の心に投げかける」と自註。
④道の辺の壱師の花のいちしろく人皆知りぬ吾が恋妻は 万葉集
(万葉仮名の原文) 路邊 壹師花 灼然 人皆知 我戀□(女偏に麗)
「壱師」とは曼珠沙華。上の句五七は序詞で「著しく」にかかる。
★師走の今、この末枯れた冬の日に曼珠沙華は違和感があるとはいえ、なぜかこの燃えるよう花びら、花蕊が無性に恋しい。