坂出沙弥島の挽歌
小生「剣持万葉講座」私製テキスト
讃岐国狭岑島(さみねのしま)にて石中の死人を視て、
柿本朝臣人麿がよめる歌一首、また短歌
玉藻よし 讃岐の国は 国柄か 見れども飽かぬ 神柄か ここだ貴き 天地 日月とともに 満り行かむ 神の御面と 云ひ継げる 那珂の港ゆ 船浮けて 吾が榜ぎ来れば 時つ風 雲居に吹くに 沖見れば しき波立ち 辺見れば 白波騒く 鯨魚取り 海を畏み 行く船の 梶引き折りて をちこちの 島は多けど 名ぐはし 狭岑の島の 荒磯廻に 廬りて見れば 波の音の 繁き浜辺を 敷布の 枕になして 荒床に 転臥す君が 家知らば 行きても告げむ 妻知らば 来も問はましを 玉ほこの 道だに知らず 欝悒しく 待ちか恋ふらむ 愛しき妻らは 反歌二首 妻もあらば摘みて食げまし狭岑山野の上のうはぎ過ぎにけらずや 沖つ波来寄る荒礒を敷布の枕とまきて寝せる君かも 巻2-220~222 |