芭蕉の「秋(の)風」19句

 秋の風伊勢の墓原猶すごし
 枝もろし緋唐紙やぶる秋の風
 蜘何と音をなにと鳴秋の風
〇義朝の心に似たり秋の風
 旅ねして我句を知れや秋の風
 東にしあはれさひとつ秋の風
 たびにあきてけふ幾日やら秋の風
 身にしみて大根からし秋の風
○あかあかと日は難なくも秋の風
○塚も動け我泣こゑは秋の風
 桃の木の其葉ちらすな秋の風
○石山の石より白し秋の風
 見送りのうしろや寂し木の風
◎物いへば唇寒し秋の風
 秋風に折て悲しき桑の杖
 秋風の遣戸の口やとがりごゑ
 秋風のふけども青し栗のいが
○秋風や藪も畠も不破の関
 秋風や桐に動てつたの霜
  ○は比較的有名な句。◎は最も有名な句。
 生涯好んで句に詠んだ季語は「月」「花」「雪」に次いで「秋(の)風」で、これら十九句である。
  ●芭蕉を象徴する季語は「秋風」かもしれない。