八月十日観音寺市「放送大学香川学習センター」公開講演会

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放送大学公開講演会
  演題「郷土文学の再認識」     
     平成二十五年八月十日()十四時~
     観音寺市立図書館二階多目的ホール
一、古典文学〔俳諧の里〕
【一夜庵】興昌寺の境内にあり、俳祖山崎宗鑑が晩年を過ごした草庵である。宗鑑は発句の独立、「俳句」形式の始祖。今なお数多い宗鑑遺墨は全国に伝えられている。
〔句碑〕貸し夜着の袖をや霜に橋姫御 (本歌取りの俳句)   宗鑑=天文二十二年(一五五三)没、        享年八九歳 (生没年未詳)
  一夜庵の名の由来の歌

    上は立ち中はひぐらし下は夜まで
一夜泊まりは下々の下の客
〔辞世〕宗鑑はどちへと人の問ふなら
                 ちと用ありてあの世へと言へ 
    『二つ笠』安永四年刊、竹阿序
                    小西帯河編俳諧撰集。
 一夜庵に残る詠草を集め写している。〈俳祖〉宗鑑の反笠、〈俳聖〉芭蕉の桧笠、どちらの俳諧も郷土では古来大切にしている。芭蕉には、宗鑑を崇敬する次の一句がある。
有りがたき姿拝まん燕子花  芭蕉
【早苗塚】琴弾八幡宮一の鳥居傍にある芭蕉句碑  
地元俳人小西帯河の所持していた芭蕉の直筆短冊を一茶の師匠二六庵竹阿の指導で建立(安永四年)
早苗とる手もとやむかし志のぶ摺
(『奥の細道』の途次、福島で詠まれた句)
【黄葉塚】大野原町萩原高尾観音堂芭蕉句碑

  とうとがるなみだや染みて散るもみぢ  
【風羅衣】芭蕉の着ていた旅衣を埋納した、芭蕉供養塔。仁尾町道明寺境内にある芭蕉句碑
    旅人と我名よばれん初しぐれ
・戦争を知らない芦原すなお
   =平成「遊々」の文学。
 
  二、現代文学〔立志・調和〕
【名詩「勾配」】森川義信(一九一八~一                 九四二)
粟井町出身、薄命の戦没詩人森川義信の名詩。時代の傾斜していく気配を逸早く感じ取った鋭利な詩。詩友鮎川信夫の戦後詩代表作「死んだ男М」として登場。「遺言執行人」として『森川義信詩集』が編まれた。国民文化祭(香川県)オープニングでは「青き蜜柑」が作曲される。
【志のある文学】の提唱 高橋和巳(一九三一~一                 九七一) 
本籍は柞田町。祖父の代に大阪に移住。戦時中大阪の空襲で焼け出され、大野原疎開。一年半を過ごす。中国古典を現代人に語る事に努める傍ら、現代社会の様々な問題について発言し、全共闘世代の間で多くの読者を得た。京大吉川幸次郎に師事助教授。苦悩教の始祖。憂鬱なる党派の世代。政治と思想に苦悩する若者に荷担。 
直木賞作家】芦原すなお(一九四九~ )有明町出身、東京在住、郷土を大切にする現代余裕派作家。観音寺市名誉市民。処女作『スサノオ自伝』 直木賞受賞『青春デンデケデケデケ大林宣彦監督で映画化、平成四年(三カ月間)観音寺市内長期ロケ。『松ケ枝町サーガ』ラジオドラマ化。『野に咲け、あざみ』新聞小説。郷土に立脚した讃岐弁を使って親しみ易い作品。ユーモアと機知に富んだ文章は母親譲りの文才による。以上、三人の文学的傾向をまとめれば、
戦没者森川義信=戦雲を予感「勾配」                           「地平」を目指す。
疎開戦後派高橋和巳=知的苦悩「志ある                                 文学」の提唱。
・戦争を知らない芦原すなお=平成「遊々」の文学
 
【方言文化としての伊吹島アクセント】
   金田一春彦歌碑の意味するもの
 観音寺沖にある伊吹島は孤島である。いりこの島と言われ、島人の言葉遣いは荒っぽく、ぞんざいなものとして本土の人からも卑しめられてきた。この島には、昔の京都式アクセントが伝えられている貴重なアクセントが残されていると言われ出した。元をたどれば、数十年前香川大学生妹尾修子さんが多様なあるセントがあることに気がつき、卒業論文で取り上げたことによる。指導教官和田実先生が学会に紹介された。
その後、言語学者金田一春彦教授の実地検証もあり、広く世に知られることになっていった。かつて伊吹島に移り住みついた京都人の訛りが伝えられたとも言われる。ここにその一部を提示しておく。 ◎二拍名詞のアクセント型五種類ある京・伊吹島
 第一類 高高 牛・梅・顔・風・口…
第二類 高低 石・歌・音・紙・川…
 第三類 低低 足・犬・馬・島・山…
 第四類 低高 糸・肩・外・空・中…
 第五類 低降 汗・雨・桶・声・春…
金田一春彦先生が伊吹島を詠んだ歌が残されている。  緑濃き 豊かな島や かかる地を
     故郷にもたば 幸せならん
  色紙に書いた直筆のこの歌を拡大して刻んだ歌碑が、島の玄関口、真浦港を望む丘に建てられている。その他、次の歌も残されている>
 あたたかき 人の情や 故郷とは
  かかるところか われは持たねど
 香川県内を舞台とした文学作品】
   〔郷土を描いた文学作品〕
 『高校生のための香川の文学』(香川県高等 学校国語教育研究会編)によれば、
二十四の瞳』(壷井栄)・『柿の木のある家』(壷井栄)・『二銭銅貨』(黒島伝治)・『青春デンデケデケデケ』(芦原すなお)・『暗夜行路』(志賀直哉)・『生活の探求』(島木健作)・金比羅森鴎外
②『讃岐の文学散歩』(佐々木正)によれば、『暗夜行路』(志賀直哉)・『二銭銅貨』(黒島伝治)・『四国路』(上林暁)・『放浪記』(林芙美子)『生活の探求』(島木健作)・『愛恋無限』(中河与一)・『地に満つる愛』(竹田敏彦)・『異母兄弟』(田宮虎彦)・『青い唐辛子』(滝口春男)・『二十四の瞳』(壷井栄)・『金比羅』(森鴎外)『新平家物語』(吉川英治
③その他
瀬戸内寂聴『白い道』・白石一郎『海の夜明け』・吉村昭『海も暮れきる』・司馬遼太郎空海の風景』・杉森久英『小説菊池寛

④『四国近代文学事典』(和泉書院・2006)
 巻末に「四国出身文学者名簿(香川県の項に約一
七〇人の解説・生没年・ジャンルが記載)
    岡田尊司】昭和三五年大野原町生れ。大野原中学―観音寺一高―東大哲学科―京大医学部―精神神経医学が専門、医学博士。作家。〔精神医学〕人格障害の時代(平凡社新書)パーソナリティ障害いかに接し、どう克服するか(PHP研究所)自己愛型社会ナルシスの時代の終焉(平凡社新書悲しみの子どもたちー罪と病を背負って(集英社新書)誇大自己症候群(ちくま新書)子どもの「心の病」を知る児童期・青年期とどう向き合うか(PHP新書)脳内汚染(文藝春秋 文春文庫)社会脳人生のカギをにぎるもの(PHP新書)「生きづらさ」を超える哲学(PHP新書)アスペルガー症候群幻冬舎新書)パーソナリティ分析恋愛編(青春新書)うつと気分障害幻冬舎新書統合失調症その新たなる真実(PHP新書)なぜ日本の若者は自立できないのか(小学館)働き盛りがなぜ死を選ぶのか〈デフレ自殺〉への処方箋(角川書店人はなぜ眠れないのか(幻冬舎新書)シック・マザ-心を病んだ母親とその子どもたち(筑摩選書)あなたの中の異常心理(幻冬舎新書マインド・コントロール文藝春秋
  〔小説〕DZ(ディーズィー)(角川書店 二〇〇三年角川文庫) - 第二〇回横溝正史ミステリ大賞受賞手のひらの蝶(角川書店 角川文庫)サバイバー・ミッション( 文藝春秋 文春文庫)風の音が聞こえませんか(角川書店 角川文庫)死夢(角川書店)…共通の夢で相次ぐ突然死(観音寺・大野原も舞台)