無題(二十九)

男「なんでそんなに大きく眼を見せないといけないんだ」
女「ま、ひどい。女の人は誰だってぱっちりした眼でありたいわよ」
男「それはそう。分からんではないけど、そんなに見せてどうなるっていうんだ。美しく見せようたって、付け睫毛だってよけいなものだよ。付けているのが見え見えなのは、よけい嫌だね」
女「何言ってんの。そんなこと言ってたら、女性群にこっぴどくやっつけられるからね」
男「いいよ、ご勝手に。個人攻撃しているんじゃないんだもん。見せかけはすぐばれるものだし、むだな抵抗だと思うよ。もっと大きくなってほしいのは、心の眼だよ。大きくしてほしいのは心の眼だよ」
女「言うわね。そんな訳の分からない屁理屈言ったって、少なくとも私には通じません。心、心と言ったって、心は見えないのだから、見える眼で心を表すんです。いいですか。『目は心の窓』なんですから。ぱっちりした目は自分の心。明眸は命の現れなの!」
男「……」