育毛剤の必要なし


 頭の髪や顔のひげを剃るのは、剃髪・浄髪・落髪。仏道修行者として世間的な虚飾を避ける僧形の自己表現。
 浄土真宗は、その宗旨の建前から剃髪はしないのが原則。本山での安居会では剃髭をする。十三仏の像で剃髪の僧形は地蔵菩薩だけ。『文殊問経』に「髭の長さは二指にしてまさに剃るべし」とあり、「指二本重ねた長さより伸ばしてはならぬ」の意。
 釈尊から禅法を受けた第一祖の大迦葉は剃髪をしなかったようだが、厳しい修行を積む禅宗等で剃髪するのは当たり前。 
 若い時から西行法師や宗鑑法師(いずれも真言僧であったと思われる)を敬慕していた自分は、有髪である身を恥じていた。勤めの身の上では、急に落髪して衆目を集めるのも嫌だったので、早く禿頭になればいいとも念じていた。それは苦もなく叶えられ、今は年相応以上に「僧形」になっている。剃刀が要らないからありがたい。
 育毛剤を売ろうとするのか、この画面斜め上にも動画で宣伝している。無駄な抵抗をするのはみっともない。若禿げを気にしていた時は一瞬。わが身を神仏に預け、自然のなりゆきに任せる快さ。
 頼みもしないのにコマーシャルが入っても見逃す鷹揚さ。育毛剤の宣伝…おかどちがいでしょう、とおかしくなる、それでいい。わずかに残る髪を新春の風に任せながら……
 
イメージ 1