出部屋の歌

 
      平岩マス子「伊吹島の思ひ出」歌集より
 
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  奢るなく産後を養う館なり誰が始めしや伊吹の島に
 
  出部屋とは「男子禁制」掟とす島の産婦の城なる館 
 
  生みし児を真先に出部屋入りなせる女ばかりの長き行列
 
  子育てのあれこれ友に学びつつ暮らせし出部屋の日々温かく 
 
  浜風の涼しき部屋にたどたどと三つ身四つ身を長に習ひき
 
  「産人は清濁併す神」として俗世離るるとも聞かされき
 
  大漁旗を立てて戻るに産婦らの手を振る伊吹島の出部屋の日暮れ
 
  胞衣などの納め処は神域と云はれて常に児らの影なし
 
  一本の巨ユーカリの庭占めて万国旗のごと襁褓揺らしき
 
  千万の産婦ら干しし襁褓らに浜風呼びし大ユーカリ
 
  島裏の荒磯も埋めて岸高く煮干工場の屋根ならび立つ