芭蕉「奥の細道」前後の心境


     書簡に現れている芭蕉自身の身の上表現

: ●元禄2年2月16日付  惣七郎・宗無宛   「奥の細道」の旅出発一ヶ月前
 野心とゞまらず候。住果ぬよの中、行処帰処、何につながれ何にもつれむ。江戸の人さへまだるく成て、又能因法師西行上人のきびすの痛もおもひ知ンと、松嶋の月の朧なるうち、塩竃の桜ちらぬ先にと、そゞろにいそがしく候。 
 
 ●元禄4,年11月13日付  曲水宛    「奥の細道」帰着一ヶ年後
 行脚乞士之癖として⋯⋯都出て神も旅寝の日数哉、 尚々いまだ居所不定候。