「旅人さん」と呼ばれたい
『笈の小文』の一節に
神無月の 初、空定めなきけしき、身は風葉の行末なき心地して、
又山茶花を宿々にして 由之
岩城の住、長太郎と云もの、 此脇を付て其角亭におゐて関リせんともてなす。
これは『野ざらし紀行』の悲壮な決意を表明した一句
野ざらしを心に風のしむ身かな
この紀行文の題意(野晒)とは違って、心のゆとりが感じられる。自分を旅人と位置づけ客観視しようとしている。諸国回遊の行脚僧の姿、心躍りが脈打っているとも言えようか。
香川県三豊市仁尾町門前に道明寺(通称、お薬師さん)境内に石碑がある。旅人と我が名呼ばれん初しぐれ この句碑は昭和末年建てられたものに過ぎないが、「風羅衣」に関する次の碑文は芭蕉資料として注目に値するかもしれない。
【風羅衣碑文】