芭蕉の句に詠まれた「夢」


     「夢」とは、無常の詠嘆とともに悠久への希求を含みもつ言葉である。
     芭蕉の発句に見られる「夢」には次のような句がある。    芭蕉全発句993句より

  端午  あすは粽難波の枯葉夢なれや  (六百番俳諧発句合)   ✳渺茫と回想する夢

  杜国が不幸を伊良古崎にたづねて、鷹のこゑを折ふし聞て  
           夢よりも現の鷹ぞ頼母しき  (鵲尾冠)           ✳夜見る夢

  明石夜泊   蛸壺やはかなき夢を夏の月 (笈の小文)        ✳生き物の消え去りやすい命の夢     

  奥州高館にて 夏草や兵共がゆめの跡  (奥の細道・猿蓑)     ✳世俗的立身出世の夢

  病中吟   旅に病で夢は枯野をかけ廻る (笈日記)          ✳人生風雅に生きたい夢