樋口一葉「十三夜」

    永遠の閨秀作家樋口一葉の名作「十三夜」   昨夜はその名月だった
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 今宵は舊暦の十三夜、舊弊なれどお月見の眞似事に団子をこしらへてお月樣にお備へ申せし、これはお前も好物なれば少々なりとも亥之助に持たせて上やうと思ふたけれど、亥之助も何か極りを惡がつて其樣な物はお止しなされと言ふし、十五夜にあげなんだから片月見に成つても惡るし、喰べさせたいと思ひながら思ふばかりで上る事が出來なんだに、今夜來て呉れるとは夢の樣な、ほんに心が屆いたので宅で甘い物はいくらも喰べやうけれど親のこしらいたは又別物、奧樣氣を取すてゝ今夜は昔しのお關になつて、外見を構はず豆なり栗なり氣に入つたを喰べて見せてお呉れ、いつでも父樣と噂すること、出世は出世に相違なく、人の見る目も…

 関の母の言葉 「今宵は旧暦の三夜、旧弊なれどお月見の真似事に団子をこしらへてお月様にお備へ申せし、これは お前も好物なれば少々なりとも…」