孝女白菊

   
    白菊を見るたび想う 今は亡き母が語りし孝女白菊   冴子

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    孝女白菊の歌     落合直文

阿蘇の山里秋ふけて、眺めさびしき夕まぐれ
いずこの寺の鐘ならむ、諸行無常とつげわたる
をりしもひとり門を出て、父を待つなる少女あり。
年は十四の春あさく、色香ふくめるそのさまは
梅かさくらかわからねども、末たのもしく見えにけり
父は先つ日遊猟にいで、今猶おとずれなしとかや
軒に落ちくる木の葉にも、かけひの水のひびきにも、
父やかへるとうたがわれ、夜な夜なねむるひまもなし
わきて雨ふるさ夜中は、庭の芭蕉の音しげく、
鳴くなる虫のこえごえに、いとどあわれを添えにけり
かかるさびしき夜半なれば、ひとりおもいにたえざらむ
菅の小笠に杖とりて、いでゆるさまぞあはれなる…

     詩のあらすじ

 西南戦争明治10年)の頃、熊本県阿蘇の山里で、群生する白菊の中から拾われ育てられた白菊という名の少女が、行方知れずの父を求め旅に出た。山賊に囚われているところを出奔して僧になっていた兄に助けられた。その後親切にしてくれた老人への義理だてと、血の繋がらない兄との結婚を望んだ母の遺言との板挟みで身を投げようとした。その時、兄と再会し二人で家へ帰ると父も無事戻っていたという話である。
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