宗鑑の辞世歌


  宗鑑はどちへと人の問ふならばちと用ありてあの世へと言へ 
(宗鑑はどちらへお出かけかと尋ねられたら、ちょっと用があってあの世へ行った              と言ってくれ) 
 普通の辞世は、暗い諦観や悟りじみた思いで詠まれるが、この辞世は死後の世界に対する怖れを明るくかわし、意表をついて辞世の型を破っている。
 【出典】狂歌撰集『古今夷曲集』 【出自】天文22年89歳一夜庵没とされるが、未詳。
 宗鑑は俳諧の祖とされた室町末期の連歌師。この歌も、風狂と反骨に生きた宗鑑らしい、軽妙な逸脱に笑いが誘われる。『古今夷曲集』の詞書に、背にできた腫物の「廱」が原因で死んだとある。「用」にはそれが掛けられている。
 彼は純正連歌に飽き足らず、卑俗・滑稽な俳諧連歌を詠んだ。生前の『俳諧連歌抄』の増補版『新撰犬筑波集』が公刊され、俳諧(発句)の独立に寄与することになったのは、文学上の功績と言える。
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