他諺の空似

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「医者の不養生」~「終わりよければ全てよし」全29諺の題目で書いたエッセー集。
「目糞鼻糞を笑う」という諺は、ロシアでは「屑が埃を笑う」、アフリカでは「猿の尻笑い」…と世界中に似たような諺は多い。「自業自得」(日本)…「井戸に唾すれば自分がその水を飲む」(フィンランド)「真上に向けて射った矢は射手の頭に突き刺さる」(イギリス)…歴史も地理も文化も全く異なるところで、同じような文句の諺がある。それを紹介するだけでなく、各国政治を風刺している。かつてヨーロッパ諸国が、冒険家や海賊を雇ってまで地理的発見を競ったのは、まさに「早い者勝ち」で、先住民の先取特権は無視されていた。
 著者米原万里東京外国語大学ロシア語学科卒業。ロシア語通訳協会の初代事務局長。報道の速報性に貢献、日本女性放送者懇談会賞を受賞。著書『不実な美女か貞淑な醜女か』(徳間書店新潮文庫)で読売文学賞。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川書店、角川文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞。2006年5月、癌で鎌倉の自宅に逝去。享年56歳。
 ユーモアと批判精神に富んだエッセイイスト。壮大なスケールの作家として著名な米原氏の遺作。国・言葉が異なっていても同じ意味の諺も存在するし、逆に国毎に意味が正反対な諺が存在する場合もある。本書の多くは闘病生活の中で書かれたものである。9.11事件やイラク戦争があった頃、アメリカの"手前勝手"主義批判が辛辣。そして、それに追随する日本、特に当時の小泉首相に対しても鋭い批判。
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