黒島伝治「豚群」

  小豆島から、作家壺井栄黒島伝治、詩人の壺井繁治三人の文学者が生まれた。 こういう現象は全国的にも ... 伝治も「二銭銅貨」をはじめ、プロレタリア文学の旗手として名作を次々と発表、永遠の文学として評価されている。
 黒島伝治(1898年12月12日 - 1943年10月17日)は、香川県小豆郡羽村(現在の小豆島町)に生まれた。壺井栄は隣村(現在は 合併で同じ町になっている)の出身である。上級学校への進学はかなわず実業補習学校に通う。
 兵役を終えた後に小説を書き始め、1925年に貧困のために合格した中学への進学を断念させる家庭の姿を描いた「電報」で世に知られるようになる。当時のプロレタリア文学はほとんどが労働者を題材にしていたなかで、農村を舞台にした黒島の作品は好感をもって迎えられた。この傾向の作品としては、差し押さえに抵抗する農民を描いた『豚群』が有名である。問題が解決するまで、これからなお一年かかるか二年かかるか分らないが、それまで ともかく豚で生計を立てねばならなかった。豚と云っても ..... 三十分程たった頃、二人は 、上衣を取り、ワイシャツ一つになって、片手に棒を握って、豚群の中へ馳こんでいた。