南瓜の花

 
   南瓜など作らぬ時代となりにけり 戦時の食べもの思い出の中          
 
        
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小山 遥

花南瓜素顔にあればなつかしき

生時代、同級生の女性から「着ている服の色に、その日の気分が左右される」と聞かされて、いたく感心したことがあった。なにせ当方は、小学生以降どこに行くにも黒い学生服を着ていたので、迂闊にもそういうことには気がつかなかったのである。お恥ずかしくも馬鹿な話だ。女性の場合は、この服のとっかえひっかえに加えて化粧ということがあるから、物の見え方も男とはずいぶん違っているのだろう。化粧のおかげで見える物もあれば、逆によく見えない物もあるのだろう。この句には、そういうことが詠まれている。たまたまの素顔のままの外出で、作者は南瓜の花を見かけた。普段のように化粧をしていたら、きっと気にもかけないで通り過ぎてしまっただろう黄色い花に気を引かれている。このときの作者は、いつだって素顔だった少女時代の気分に戻ったのだ。したがって、しみじみとした「なつかしさ」の気分にひたれたというのである。化粧、恐るべし。……とまで作者は書いてはいないけれど、学生時代と同様に、私はいたく感心している。『ひばり東風』(1998)所収。(清水哲男