二宮記録(源平時代)
【史料】源氏・平家願書(『二宮記録』)
: 〇源氏願書 付 上矢御神納の事
爰(ここ)に悪臣有りて日本六十余州を悩ます。数国を奪取して恣逸行迹誠に以て前代未聞の悪逆なり。上は天子を蔑(ないがしろ)にし申して公卿大臣の位官を奪う。下は庶民のごとく誰か之を悪(にく)まざらんや。其れ已(すで)に保元に非(あら)ず、為義為朝源氏の一属を亡じ平治に義朝一家を誅伐し、剰(あまつさえ)其の領を奪ひて己が一門に寄せ、大いに栄花を極め実に暴悪の至りなり。然るに霊験著明の尊神奉号八幡大神以て直に祈る。これ則(すなわ)ち感応、今祈る所の者、冥罰平家に下る。恵みは源氏に勝利し、すみやかに会稽の恥辱を雪(すす)ぐ。永(とこしえ)に頻繁の敬礼を竭(つく)す者なり。乃(より)て願文を敬って白(もう)す。
奉献上 上指之矢
蒲卿曹司源範頼
畠山庄司次郎重忠
和田小太郎義盛
梶原平三景時
同源太景季
佐々木三郎盛綱
八幡大神 同四郎高綱
大水上大明神 那須十郎亮宗
三嶋竜神 同与一同同
(他十一名略)
矢一筋宛
元暦元年二月廿五日
○平家願書
敬って御立願を白す状
抑(そもそも)此の度我が君利運を開くに当社は聖谷都に迂(とお)く、氏神を奉崇すべく若く又神力の功无(な)き者、国家を惛(みだ)し、四海魔王を成す。怨みに報いるに乃(すなわ)ち願文件(くだん)の如し。
時に元暦元年二月十五日
平中納言教盛
太夫経盛
三位中将資盛
少輔(有)盛
祈精者 神田治部少輔貞家
