造語「偲碑」について

 
  ●造語「偲碑」にたどり着くまで
 
 1 、「紙碑」から始まった迷走
 文学碑(句碑等)という誰でも分かるものから、「文芸紙碑」という怪しげなものに首をつっこんでいる。今のところ、①文芸作品の卑下した言い方、②碑(石文)に対する手作り紙碑、③世に知られていない同人誌。以上三分類してみることもできる。
①の使用例は少ないものの、松本清張戸川幸夫等有名作家の書名にも使用されていて、こと新しいものではない。②は手作り自家製のもので、創作的にあらんと模索している表現法である。③は海津市の現代紙碑文芸館で収集しているものである。
 
 2、「シヒ」の当て字
  ①詩碑 ②紙碑 ここまでは一般に分かってもらえる。③偲碑 ここまで来ると、
完全に個人の造語となり、これまでに用例はないであろう。
意味は字面通りで「亡き人を偲ぶ碑」で、何も珍しいものではない。世に多く流布されている功績ある人の顕彰碑もここに含めることもできる。これは文学碑の範疇に入らないのでここでは除外したい。
 ここで「偲碑」というのは、「紙碑」の関連語で密かに誰かを思慕・追慕する碑文と言う意味である。
 
 3、「偲碑」の提唱
 私的、紙碑的に、密かに人を偲ぶ碑である。厳めしい「碑」ではなく、心奥に刻まれる目印である。自己宣伝ではなく、もの言えなくなった死者のかつて生きていた証をせめて残像として定着しておく行為であり、その造形である。比喩的にあっても「碑」は心に確固として造形でありたい。「心」を「形(言)」として表現しなければ、他者理解・共感してもらえない。今しばらくこの「偲碑」にこだわりたい。
 
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