詩の中の死を読む
今年初めての准看教養国語で取り扱う予定は、次の詩である。
①死の正体(上林猷夫)…個室に変わった老人の擬人法「死」を主体として詠む。
②表札(石垣りん)…様・殿の付かない、自分の住所の呼び捨ての表札がいい。
崖( 〃 )…サイパン島の崖から飛び降りた人は、死にきれず海に届いていない。
③レモン哀歌(高村光太郎)…レモンを飾って清冽な思い出の愛妻智恵子を偲ぶ。
レモン哀歌
そんなにもあなたはレモンをまってゐた
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱっとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それから一時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱっとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それから一時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう
永訣の朝( 〃 )…若くして昇天していく「けなげな」妹をいとしく思い、感謝する。
[看護教養国語]のアプローチ
形而上的「死の正体」、戦争犠牲者への鎮魂曲「崖」、近代挽歌の代表作「レモン哀歌」「永訣の朝」、数編の死をテーマとした名詩を読むことによって、看護に携わらんとする者の【精神の高さ】を培う。