日仏交流讃岐の秋

 ~讃岐人雅舟短信~      
   仏蘭西の夢 讃岐路に現る秋        雅舟
 予想もしなかったフランス俳人に会う機会に恵まれた2012年秋。蕪村寺で「花鳥諷詠」について講じさせていただいた。一般の日本人以上に俳句に対する熱い思いが伝わってきた。
   仏人は上客 すぐに庵を立つ   雅舟
   しぐれても 宗鑑墓碑の山頂へ  雅舟
 俳諧の始祖である山崎宗鑑が晩年を過ごした一夜庵を訪れ、簡単な解説をさせていただいた。庵の名のいわれ「上は立ち」、辞世の歌「ちと用ありて」など諧謔に満ちている。
 縁あってフランス俳人たちとオリーブの小豆島に渡る幸せをかみしめる。
  接待の島の教え子 秋遍路    雅舟
 50年前の高校生がまだ島の玄関で観光ガイドをしていて、おむすびの差し入れをしてくれる。
  放哉の笑むや 珍客に酒注がれ  雅舟
 放浪の自由律俳人尾崎放哉の墓に詣でて墓石に好きだった酒を注ぐ。
 かくして、この秋は積年の夢「仏蘭西」を体感して、至福の季を過ごすことができた。
 
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     日本最古の俳跡「一夜庵」   2012年12月19日撮影
 
 (余録)      
 9月にフランスの代表的俳人数人を迎えた。中旬から香川県滞在中は俳跡を案内。丸亀の蕪村寺、観音寺の宗鑑終焉の一夜庵、小豆島では放哉記念館、句碑の森を探訪。来日の目的は俳句の根源を求め、自らも本場日本で俳句ハイクを作る旅であったかと思う。
 フランス語で三行詩に詠まれたものを、合谷さんの仲介を経て五七五の定型にまとめる。季語は『歳時記』がないはずのフランスにおいて必須条件ではない。丸亀での開講式では「花鳥諷詠」について話させてもらったが、短時間で意は尽くせなかった。あえて季語を入れて詠んでもらったフランス人の翻訳俳句。
  秋の空風なくも揺れ内子の灯  マルティン
  秋時雨透き通る羽根逆光に   ダニエル
  夏の風丸亀の酒ちょと味み   ローラン 
  宗鑑の墓参の叶いにわか雨   ミン
 これらの句が仏訳されて逆輸入されれば、どんな句になるのだろうか、興味のあるところである。
 語り尽くせぬ自然の深遠さ、人事の背後をわずか17音に集約する難しさ、それでもこのフランス人は果敢に挑戦していることに敬意を表さずにはいられない。帰国後どんなに過ごされているだろうか。できれば私もフランスへ行って俳句を作ってみたい。