万葉植物の【葵】とは

 
 葵と言えば、葵祭の「フタバアオイ」を思い浮かべたり、世俗によく見かける「タチアオイ」かと思う人があるでょうが、『万葉集』で詠まれた歌の季節の循環からすれば、フユアオイ・カンアオイとみなすのがいいかもしれません。ただ、誰も断定はできないでしょう。諸説あっていいのです。
 
  成棗  寸三二粟嗣  延田葛乃  後毛将相跡  葵花咲  (『万葉集』巻16-3834)

   (梨 棗 黍に粟つぎ 延ふ葛の 後も逢はむと 葵花咲く )

  梨(なし)、棗(なつめ)と続くように、あなたに会いたい。葛のつるが別れてまたつ   ながるように、  またあなたに会いたい。あなたに逢う日は花咲くようにうれし   い。
  掛詞…ひ黍(きみ)に粟(あは)つぎ --> 君に逢はつぎ   葵(あふひ) --> 逢う日
  梨の花(春)→棗の花(夏)→粟の花(秋)→葛の花(秋)→寒葵(冬) この葵は夏の葵  ではなく冬の寒葵、フユアオイ(アオイ科)が有力のよう。